今更ではありますが、各コレクションのエピソードやインスピレーション源を記録として残したく、アーカイブにはなりますが23AW コレクションのエピソードからお話させてください。

なぜ23AWから綴るかと言いますと、1つは次回26AW コレクションを製作・発表するにあたって、本コレクションの背景が地続きになるということです。
皆さまに事前に知っていただけたらより来季コレクションが明確になるかなと思った次第です。
2つめはオンラインストアにまだほんの一部ですがアイテムがあるため、エピソードがあるとよりアイテムについて関心や愛着を持っていただけるかなという点です。
こちらを書いている途中だった1月10日時点ではまだ26AWコレクションの製作は始まったばかりです。いつも作りながらテーマを固めていくため、はじめからすべて完璧に決まっているわけではありません。
手探りで、形にしていきながらぼんやりあるイメージを構築していきます。最終的にアイテムができ、撮影後のビジュアルができてから私自身も輪郭がはっきりと分かり、それらにしっくりくるテーマ名をつけるイメージで毎シーズン迎えています。
しかし、次回は23AWコレクションのムードやベースが私の核に強くあります。

23年の本コレクションのテーマ名は
〝modullness〟モダルネス
テーマ名は造語で、〔modern〕モダン+〔dullness〕ダルネスを組み合わせたものである。
・modern モダン
華美な装飾を排し、シンプルで機能的な空間。シックモダン、シンプルモダンなど多様なスタイルがある。
・dullness ダルネス
くすみ、鈍さ、などを意味する。
_
下記はInstagramに記載していた当時のメモの引用とプラスで追記したもの
▽
制作時の半年前、新宿伊勢丹の階段を写真に記録していた。
当時は真新しかった階段から人々が行き交い、色むらや味のある青色に変化していったのかとふと経年劣化した床を見て立ち止まる。
また、以前から影響を受けている写真家のシャルロット・デュマの写真に写る馬の毛。横たわり汚れているのか、はたまたその模様なのかわからない。毛は柔らかなグラデーションになっている。

坂本龍一氏の綺麗なグレイヘア・白髪に見惚れながらも当時はあまり彼のことは知らず、近所の区役所がホールになっており月1で映画館になる場所でたまたまドキュメンタリーを鑑賞した。
歳を重ねたり、経過することで変化する色の移ろい。そこに合わせてプラスするモダンさ。
私は古着ではなく新品の服を作っているので、ただボロボロにするだとか汚すのではなく、自分のフィルターを通してどのような服が出来上がるのか試してみたかった。そうして今回はニットウェアに反映してみる。

ここ数年で自分の内側は大きく「女」という性別の認識ではなく男も女も共存するのだと感じてきた。
その正体は不明だったが、亡くなった祖父に対して強く光を感じる。彼の片目の瞳は、私が生まれた頃から木材の仕事により失明しており、まろやかなエメラルドミントグリーン色をしていた。
母から後で話を聞くと、母からはグレーに見えていたようだ。
私は幼い頃、よく祖父に抱っこしてもらっており近くで見ていた。そこでまじまじと見知らぬうちに観察していたのかもしれない。
双子のため、祖父は私を、祖母はもうひとりを、という抱っこ担当がなぜかあった。
見える・見えない関係なく、その瞳は宝石のようで憧れていた。身体の中に綺麗な色を閉じ込めている。
これは後付けだが、私はもしかしたら祖父への憧れと尊敬の眼差しで今、生きているのかもしれないとふと思った。偶然にも祖父の瞳の色のカラーのニットも作った。
(それからというもののミント色は複数登場し、自身の中でも光の強い色だと認識する)

年末、岐阜県の実家に戻った際、ひとりで家の周りを散策した。雪が少し残った田畑と、透き通る空気。ぐるりと辺りを周ると祖父と祖母が過ごした隠居部屋に行き着く。
実家は古くまだ外にお手洗いが残っており、側面にしつらえた曇りガラスからみえる葉の景色。廊下の剥がれた障子。車の停車跡。

Drooping box shirts〔plain〕
障子がぺろんと剥がれ垂れている様をシャツに落とし込んだ。もともと飾りとして考えていたが、パターンの構造上自然に繋がるようポケットにもなった機能的でクリーンなシャツ
_
祖父の代名詞といえばタバコである。
部屋の壁やセロテープはタバコのヤニで黄色に染まっている。そのくらいタバコを愛好していた。
23AW発表時に新しくリリースしたmulch perfumeにもタバコ・カッシーなど渋めな調香。
女性が纏うことでシックモダンで、性別が謎な佇まいになる香り。
男性が纏うことで、祖父のような奥行きのある人に。
私の生活や源には、祖父が隠れていた。
_
26AWはこちらの気持ちやテーマを影に潜めながら、地続きのようにはじまります。
しかし、同じ場所をただなぞるだけではなく、またここ半年のうちに新しく出会ったもののムードや温度を大切にしながら、過去の自分が今まで大事にしていたものも加えていきます。
また伝えたいことがあればここに記すようにしていきます。
RITSUKO KARITA
